もし今月、あなたに1枚のCDを買える予算があったとしたら、是非その1枚にエントリーしてほしいのが、キリンジの新作『BUOYANCY』(ボイエンシー、“浮力”の意)だ。ポップ・ミュージックの膨大なアーカイヴから良質の部分を抽出し独自に精錬したようなキリンジならではの美しさを随所にキープしつつ、これまで以上の活力を感じさせるこのアルバムは、彼らが新たなフェイズに突入したことを告げている。「ギアが変わった感じをちゃんと伝えたかったのかもしれない」(堀込高樹)と自ら語るこのアルバムについて、そして現在の立ち位置について、堀込兄弟に訊いてみた。 堀込高樹(以下、高樹)「プランというか……10年以上やってるとだんだん自分の作る曲の感じやアレンジの方法が定まってくるんですよね。そうなると刺激も減るから、あまりいいことではない。そうやって探りながら曲作りをしつつ、今までのキリンジなりの和声やメロディの良さ