多くの裁判を傍聴し、著書に「裁判長!死刑に決めてもいいすか」などがある北尾トロ氏は、売春容疑で捕まった妻の奇妙な「気遣い」を目にしたという。 * * * 被告席に若い女が座っている。まだ三十路にも達していないだろう。都内の路上で声をかけ、売春しようとした容疑だ。 女は十分若くて美しい。法廷での受け答えもしっかりしている。高望みしなければ、働き口はいくらでもあるだろう。ということは、何か事情があるのだ。 近頃の女性は気軽にAVに出たり、性風俗店で働くことに抵抗がなくなったと言われるが、法廷に出てくるその種の女性たちを見ていると、そんなのはごく一部の話だというのがわかってくる。 多額の借金に追われているから、親への反抗心からぬかるみにはまって、母子家庭でフルタイムの仕事に就けず夜の仕事を選んだ、働かない夫に強制されて仕方なく……。好きでやっていたから捕まっても後悔してない、などと