五年ほど前に祖父が亡くなった際、彼が戦争体験を綴った遺稿が出てきた。それを紹介したい。 彼はアマチュア文筆家で、筆まめだったし、俳句や川柳を書き溜めたノートを何冊も持っていた。「我が二等兵物語」と題されたこの文章も、原稿用紙33枚に丁寧に清書されたものだった。一ページ目の注には、「此の原稿は昭和56年起稿」とある。清書したのは平成四年だったようだから、実に11年をかけて完成させた力作だ。 「戦争体験」というと、どうしてもシリアスで、悲惨なものばかりが目立つ。だが、それだけが「戦争体験」ではなかろう。この「我が二等兵物語」は、主に学徒出陣で徴兵された直後の訓練の期間にフォーカスし、その日常をユーモアを交えて活写している。祖父はとても大らかな人だった。重たい現実も、消化して笑いに変えてしまう逞しさがあった。 この原稿は世に出ることなく祖父は亡くなった。終戦記念日の今日が、これを世に出すのに最も