スウェントヴァイトという都市がこの世界に存在したことはない。つまりこれは架空の世界だ。だが所謂「竜と魔法の存在する」ファンタジーではなく、実在しないというだけでその様相は全くの中世欧州のそれである。 スウェントヴァイトは知の砦だ。古今東西あらゆる書を集めた書院を有し、それを守護する3つの騎士団を保有している。 この時代、本は宝と同義である。羊の皮を剥ぎ毛を削ぎ脂を煮溶かし、水で張り伸ばした皮を乾かしては薄く滑らかに研いでゆく。そうして一月もかけて出来上がる羊皮紙はたった数枚。それに文字を丁寧にペンで書き込み、要所には挿絵を入れ、また余白にも模様を書き込み、それらに様々な鉱物を微粉末にすり潰し卵白などで溶いた絵の具で着彩し、金箔を膠で貼り付けてゆく。1冊を書き切るまでに半年〜1年以上を要することも珍しくはない。それほど金と手間をかけて書かれるので、装丁も相応に豪華でなければならず、だから金銀
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