■米の豊作を願い捧げられた命 肉が好きだ。しかし、日本では明治になるまで、ほぼ肉食はしなかったと聞いたことがあり、「すみません、動物をばくばく食べちゃって」と少々うしろめたく思っていた。 だが本書によると、日本人は縄文時代からずっと、肉を食べてきたのである。「これを持っていれば、肉を食べても許される!」という、諏訪大社が発行するお札(ふだ)(「鹿食免(かじきめん)」)まで存在した。やっぱりなあ、肉はおいしいもん。抜け道を探してでも、食べたいものです。 ではどうして、表立って肉を食べにくい風潮があったのかというと、飛鳥時代から国家が殺生と肉食を禁じてきたからだ(ただし、当初は猪〈いのしし〉や鹿などの野獣を食べるのは許されていた)。禁令が出た背景には仏教思想もあるようだが、一番の要因は、米を安定的に生産するためだった。稲は栽培が難しく、豊作を目指して、さまざまなタブーが人々に科された。「動物を