『米原万里の「愛の法則」』(米原万里著・集英社新書)より。 (作家・エッセイストであり、ロシア語通訳としても知られる故・米原万里さんの講演録集の一部です。米原さんのプラハのソヴィエト学校での体験から) 【日本の国語の教科書は名作をリライトしたり、あるいはダイジェストにしたりして載せますが、私が通っていたソヴィエト学校では、国語の授業と宿題で実作品を大量に読ませるのです。かなり19世紀の古典偏重でしたけれども。それから学校の図書館に本を返すときに、司書の先生が生徒に読んだ本の要約を、毎回毎回言わせるのです。感想は聞かれません。つまり、その本を読んだことがない人に、どんな内容かわかるように伝えるということを、毎回やらされるのです。国語の時間もそうです。 小学校3年までいたから覚えていますが、日本では「はい、なになに君。そこ読んでください」。大体一段落読むと、「はい。よくできましたね。じゃ、なに