東日本巨大地震の津波で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市で、国の名勝にも指定される「高田松原」の数万本の松が、ほぼすべてなぎ倒される中、奇跡的に1本だけ生き残った。 優美な風景は一変したが、すさまじい波にのみ込まれながらも、強く、まっすぐ伸びる1本の松の姿に、市民らは「街を復興に導く象徴だ」と、新たな希望を見いだしている。 同市の砂浜に広がる高田松原は、地震前まで約2キロにわたって松が植えられていた。地元住民らでつくる「高田松原を守る会」や市によると、約350年前、塩害に苦しむ農家を助けようと地元の豪商が私財を投じて防潮林として黒松を植えたのが始まり。夏には約20万人の海水浴客が訪れる県内有数の観光名所だった。 折れた枝や漁具、船の破片などが散乱する無残な姿となった砂浜で、たった1本だけが、すぐそばの建物が盾となったのか、被害を免れ、枝も幹も無事だった。 「守る会」副会長の鈴木善久さん(