"Prions are a common mechanism for phenotypic inheritance in wild yeasts" R. Halfmann et al., Nature, 482, 363-367 (2012). 今回の日記は,論文そのものと言うよりそのバックグラウンドが大部分を占めています.調べていたら結構面白かったもので. プリオンというと一般的には哺乳類において狂牛病などの原因となる異常タンパクを指すが,今回の話題は近年注目を集めている酵母プリオンに関するものである. 狂牛病の原因因子としてのプリオンが提唱されたとき,研究者には大きな衝撃が走った.何せDNAもRNAも持たない単なるタンパク質が病原体として振る舞い,自己触媒的に増殖していくというのだ.当初はそんなことが本当に可能なのかを巡って激論が交わされたが,その後様々な生物から同様の自己触媒的な構造