「本籍・住所・氏名不詳、年齢推定20~30歳代位の女性」 新宿からJRでおよそ1時間の羽村駅。そこからさらに10分強歩いたところに、その踏切はある。車一台がようやく通るような、こぢんまりとした踏切だ。近所は住宅街だが、この時間ともなれば人通りもまれである。 世間はゴールデンウイークの第一日目、薄曇りの過ごしやすい気候だった。連休初日を終え、都心から帰途につく人々を乗せた青梅方面行きの電車が、スピードを上げて、踏切に差し掛かる。 鈍い音とともに、電車は緊急停車した。はねられた女性は、間もなく死亡が確認された。 JR青梅線・羽村~小作間の踏切で起こった、一件の事故。取り上げた新聞はない。遅延を引き起こした「人身事故」として、わずかにネット上で、断片的な情報が伝えられたのみである。 身元は分からなかった。遺留品は衣類とバッグ、そして左手薬指の指輪くらいだった。およそ5カ月後の10月4日、政府が刊
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