歴史の本は色々あるのだが、『スパイス、爆薬、医薬品 — 世界史を変えた17の化学物質』には、化学物質から見た切り口がこんなに面白い事を思い知らされた。 普通の歴史の本では、何かが発明された、何かの交易が高まったと、財についてはぶっきら棒に叙述され、その財がいかに革新的なものであったか理解するのは難しい事が多いように思える。本書は財の成分である化学物質にまで踏み込むことで、その革新性を良く説明することに成功している。著者の化学者二人は歴史の要因は複数あると控えめだが、化学物質が政治や経済を決定して来た事に疑念を抱かせない。そして化学畑の人でなくても、化学構造式が便利な道具だと良く分かる秀逸な本だ。 本書で取り扱う化学物質は、化学物質と言ってもビーカーで何かをかき混ぜて作らないといけない物質には限られない。香辛料、かんきつ類、砂糖、木綿など、身近な物も多く紹介されている。これらが発見・利用され