古い知り合いのIさんから電話があった。「本の整理をしていたら、昔、古本屋で見つけた古い本が出てきた、小松さんなら使い道があるかと思って」とのこと。さっそく近くの図書館で落ち合って、少し話をしながら、件の本をいただいてきた。 それは、戦前(1939年、昭和14年)の「思想研究 第八輯(しゅう)」で、四角で囲んだ秘の文字の上に1263と刻印された「教学局」の出版物だった。「教学局」は、1937年の7月に設置された文部省の外局で、図書の刊行などの調査、学校や社会教育団体の思想情報の収集や監督、教職員の再教育などを所掌していた。 当時の教学局長官は、警視庁特高課長などを務めた内務官僚・小林光正だ。小林光正は、戦後、公職追放を受けたのち、報知新聞社副社長を経て、読売新聞の専務取締役に就任している。 「教育關係における思想事件」や「思想彙(い)報」などの報告を斜め読みしながらパラパラとページを捲ると、