ジョブズはピクサーをコンピュータ製造の会社に変えたが、そのせいで倒産危機に陥ってしまう。大リストラを始めた彼は、CGアニメ制作部門の閉鎖を求めた。そこには後に「トイ・ストーリー」を生むジョン・ラセターもいたのだが───。 音楽産業、エンタメ産業そして人類の生活を変えたスティーブ・ジョブズの没後十周年を記念した毎日連載、二十一日目。 ■「ジャスト・メイク・イット・グレート」 その日、ピクサーの経営会議は荒れているようだった。 ジョン・ラセターは、自分のブースで待っていた。会議室で何が起きているか、薄々感づいてはいた。いよいよリストラが始まろうとしている。オーナー、ジョブズの戦略ミスでピクサー社は大赤字が続いていたのだ。 閉鎖すべき部門があるとしたら、まず自分らだろう。コンピュータ販売を生業とするこの赤字ヴェンチャー会社に、アニメ制作部門があること自体が浮いているのだ。机をおもちゃだらけにして