加藤直樹の『九月、東京の路上で』という、関東大震災の時の朝鮮人虐殺の本が話題であるらしい。私は「そういえば、あれは」と思ったのだが、工藤美代子の『関東大震災 「朝鮮人虐殺」の真実』(扶桑社、2009)である。まあいわゆる「右翼本」で、朝鮮人虐殺は、実際に日本転覆を狙った朝鮮人がいたので自警団員は正当防衛で作られたのだとする本である。これには、山田昭次が『世界』2010年10月号で批判を書いている。それにしても遅い。そして今見たら、工藤の本は品切れになって高値がついている。まずいというので絶版にしたのか。それも嫌な話で、工藤も反論して徹底的にやればいいのである。 私は工藤著刊行当時、立ち読みして、非常に嫌な感じがした。そして、あちこちから批判が起き、論争になるかと思っていたら、ならなかった。工藤美代子は、だいぶ前からロイヤリストのウルトラナショナリストになりつつあったのだが、世間はなぜか放置