「彼らが訴えていることが何か、しっかり感じ取りたい」。津久井やまゆり園事件の発生時、被害者の救命に当たった医師の稲垣泰斗さん(42)は、これを境に知的障害者と接する意識が変化した。入院中の被害者たちに接した際、一人一人の感情表現の仕方など同園の職員が事細かにまとめた資料に触れたことがきっかけだった。26日で事件から8年。現場近くの診療所にも勤務する稲垣さんは、障害の有無にかかわらず患者の訴えや思いに耳を傾けて少しでも理解しようと努めている。 【動画】消えた痕跡…やまゆり園殺害現場、初の公開 「(相模原市)緑区で多数傷病者事案があったので、全員出勤になりました」。2016年7月26日早朝、稲垣さんは自宅で電話を受けた。詳細が分からないまま、勤務していた北里大学病院救命救急・災害医療センター(同市南区)に向かった。 途中、車のラジオで事件を知った。同センターに入った稲垣さんは、救急車で次々と傷
人道にも医道にも反する残酷な人体実験であったと、改めて憤りを禁じ得ない。 戦時中、国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(熊本県)の入所者に、陸軍が「虹波(こうは)」と名付けた薬剤を投与し、9人が死亡した実験について、同園が検証作業の中間報告を公表した。 秘密軍事研究であり、園長をはじめ複数の京都帝大医学部出身者が関与していた。同大学現役教授が研究嘱託だったり、熊本医科大で虹波に関わり、戦後に京都大医学部教授に転じたりした人物もいる。 中間報告によると、少なくとも1942~47年に6歳の子を含め、入所者の3分の1を超える472人に投与されていた。写真の感光剤を合成した虹波について十分な説明はなく、激痛など副作用もあったという。 ハンセン病患者は当時、警察を使って強制収容され、園長には入所者に制裁を科す権限も与えられていた。高い塀で閉ざされた施設内で、拒絶できない状態の被験者への薬剤投与は、卑劣な
誰しも、自分が亡くなるときには、苦しまず穏やかに、と思うでしょう。先日、スイスで安楽死を遂げた難病の患者さんの例がテレビで放送され反響を呼びました。放送を機に安楽死に関心を持たれた人も多いと思います。私の外来でも、抗がん剤治療を受けている患者さんが「できるだけ、最後は苦痛がなく、楽に亡くなりたい、テレビでやっていたように、スイスに行かないとだめなのでしょうか?」と聞いてきました。私は「日本にいても、緩和ケアで、ほとんどの苦痛をなくすことはできます。それでも難しい場合は、鎮静といって、眠らせることもできます」とお話をしました。そうしたら、「まったく知りませんでした。緩和ケアは何もしないところと思っていました。それなら緩和ケアを受けたい」と言われましたので、抗がん剤治療を続けながら、緩和ケアを並行してやってくれる施設を紹介することにしました。このように、緩和ケアが何をしているのか、まだ一般には
三重県の鈴鹿市の国立病院で11日、入院患者に対して医師や看護師による虐待を疑われる行為が36件あったことがわかりました。 【動画で見る】障害ある入院患者に「ダンゴムシみたい」少なくとも医師や看護師8人が虐待の疑い 国立病院機構鈴鹿病院 国立病院機構鈴鹿病院によりますと、匿名の通報に基づく調査で、複数の医師や看護師らが障害のある患者に対し「ダンゴムシみたい」「おまえはゴミ」などの暴言を吐いていたことがわかりました。 また、入浴後の患者にバスタオルをかけたまま15分ほど放置するなどの行為もあったということです。 虐待が疑われる行為は、去年1年間で患者25人に対し36件確認され、少なくとも8人の医師や看護師が関与していました。 病院は問題を把握した後も、障害者虐待防止法で義務付けられた自治体への報告をしておらず、取材に対し「認識や判断が甘かった。再発防止に取り組んでいく」とコメントしています。
重度の障害がある人の治療を担う国立病院機構鈴鹿病院で、36件に及ぶ患者への虐待疑惑が。 【写真を見る】元職員「ひどい言葉を…何回か耳にした」 医師らが患者に36件の“虐待”か 「上層部はなかなか動いてくれない」 「上層部は事案を把握していても改善しようとしない」 元職員が語る病院の実態とは。 (鈴鹿病院の元職員) 「『おい、お前』とか『ダンゴムシみたいやな』とか、そういうひどい言葉をかけているというのは、何回か耳にしたことがある」 こう話すのは国立病院機構鈴鹿病院で、以前働いていた職員の男性。患者への虐待とも言える行為が常態化していた病院に嫌気がさし、鈴鹿病院を退職しました。 (鈴鹿病院の元職員) 「病院の上層部に“この辺を改善してほしい”と訴えたとしても、なかなか動いてくれない。それが退職理由の一つでした」 ■入浴後の患者に“バスタオルをかけたまま”約15分放置 鈴鹿病院によりますと、医
全国の国立大学で小児神経学の専門講座を持つのは岡山大学と鳥取大学の二つのみ。前垣はそこで様々な「特性」を持つ子どもたちと向き合っている。薬など根本治癒の方法はない場合も多い。 - 撮影=中村治 親や社会は子供たちの持つさまざまな特性とどう向き合えばいいか。鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科教授の前垣義弘さんは「発達障害は自閉スペクトラム症、ADHD(注意欠陥多動症)、限局性学習症(学習障害)などの総称である。発達障害の傾向がある子どもは全体の10から20パーセントに及び、とりだい病院のある鳥取県では5パーセントが病院に通う。たとえば我慢が苦手な傾向にあるADHDの子どもを持つ親御さんとは、一緒に工夫してお子さんに対する作戦を考えていく」という――。 【写真】鳥取大学医学部附属病院 脳神経小児科教授 前垣義弘 ※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 16杯目』の一部を再編集したもの
新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが5類に移行して丸1年が経った。介護施設では、感染防止と規制の緩和のバランスを見極めながら入所者の生活を守っている。5類移行から1年後の介護施設の対応の変化について施設を取材した。 【画像】新型コロナ5類移行から1年… 介護施設の“対応”に変化は?施設を取材 5類移行から1年…“面会の場”に変化は?新潟県見附市にある特別養護老人ホーム「ケアガーデン新幸」。 面会をする場の光景は、5類に移行したばかりの1年前とあまり変わらず、今も家族との面会はマスクをした上でパーティションを隔てて行われていると藤井文恵施設長は話す。 「まだまだ施設の中の罹患もあったり、職員もそうだが、面会いただいた方も帰ってから熱が出て陽性だったという話を聞くと、なかなか自由な面会に踏み切ることが施設としてもできない。それまで歩けていた方が1週間寝ると、私たちは元気に回復するが、高齢者は
身体に障害のある子どもの医療費の軽減制度をめぐり、厚生労働省は、利用者が継続して必要としていながら対象外となっている可能性があるとして、見直しの検討に入った。9日には有識者会議を開催。今後の実態調査を踏まえて、対応策を詰めていく。 【写真】自立支援医療制度の実態を把握するため、初めて開かれた有識者会議=2024年5月9日、東京都千代田区 課題となっているのは、障害者総合支援法に基づく「自立支援医療制度」。精神疾患や身体障害の治療費について、自己負担の3割のうちの2割を公費支給する仕組み。所得に応じて、さらに軽減される場合もある。 この制度で18歳未満が対象の「育成医療」に分類されていた人が、18歳以降も治療が続く場合は、18歳以上が対象の「更生医療」に移る必要がある。その際、身体障害者手帳の提出が必要だが、手帳の取得が難しく、制度の対象外となる事例が指摘されている。
福岡県大牟田市にある病院で、複数の男性職員が女性患者など6人に対し下半身を触るなどの性的虐待を繰り返していたことが分かりました。 TNCが独自に入手した音声データから、驚くべき虐待の実態が見えてきました。 【説明会の音声データ(関係者提供)】 ◆国立病院機構・大牟田病院 川崎雅之院長 「私も院長として、この病院でこの案件が起こったことを非常に辛く思っておりますし、責任を感じております」 4月24日に大牟田市内の病院で開かれた説明会の音声です。 謝罪を繰り返す院長に対して、入院患者の家族らが怒りの声を上げます。 【説明会の音声データ(関係者提供)】 ◆入院患者の関係者 「虐待って言っているけど、刑事事件ですよ!犯罪なんですよ!」
職員による患者への性的虐待が判明した独立行政法人・国立病院機構大牟田病院=福岡県大牟田市橘で2024年5月1日午後、降旗英峰撮影 独立行政法人・国立病院機構大牟田病院(福岡県大牟田市)で、看護師ら男性職員5人が、身体障害のある入院患者11人に下半身を触るなどの性的虐待を疑われる行為を繰り返していたことが同病院への取材で判明した。そのうち6人については自治体の調査で性的虐待を受けたと認定された。同病院は外部の専門家でつくる第三者委員会を設置して調査しており、2日に記者会見を開き、経緯を説明するとしている。 【写真で見る】社会に衝撃を与えた事件 同病院によると、2023年12月、入院患者から「男性介護士に下半身を触られた」との訴えがあり、院内で調査を開始。職員らへの聞き取りなどを進めた結果、身体障害がある男女の入院患者11人が、看護師と介護士の男性職員計5人から虐待を受けた疑いがあることが判明
コロナ禍で保健所の業務が逼迫(ひっぱく)し、その役割が注目された。「今こそ保健所復活、保健師の数を増やし、ソーシャルワーカーも加えて保健所を基盤に地域での生活を支援する仕組みがもっとできればいいんじゃないかと思うんです。近所付き合いが薄れた分、普段から見守ってくれ、相談できるところが必要です。病気になったら訪問看護師や医師が訪れ、病院とも連携する。そんな支援体制が求められているんじゃないでしょうか」 「私はクリスチャンですから、命は神様の思(おぼ)し召しで、それに従うよりしょうがないと思っています。だからといって何もしなくていいわけじゃなくて、病気になれば治療もするし、予防もする。だけど最後は自分でどうなるものでもない。その意味ではみんな同じ。あのキッシンジャー(元米国務長官)も100歳で亡くなった。最後は一つ。みんな亡くなる。命や死については『委ねる』という言葉が一番近いかなと感じます」
86歳の独り暮らしの男性が数日後に退院する。病院の主治医は、自宅へ戻ることに難色を示した。家族は、転院か施設入所を考えていた。だが、男性は自宅に帰ることを強く希望し、在宅復帰が決定した。 今回の入院の原因は、転倒による大腿骨頸部(けいぶ)骨折。主治医は、回復期リハビリテーション病棟がある病院への転院を勧めた。しかし男性、「一日でも早く家に帰してほしい」と嘆願。リハビリの継続を条件に、主治医は在宅復帰を許可した。 面会に出向いたケアマネジャーは、早く自宅に帰りたい理由を聞いてみた。男性は「病院が好きな人いますか?」と答えた。 質問したことが恥ずかしくなるような名答だった。普通の人が抱く、普通の感覚だとケアマネジャーは思った。 ◇指導の会議 この日は、帰郷している長男がいる間にということで、退院前カンファレンスがセットされていた。ケアマネジャーはそのまま病院に残り、カンファレンスに参加した。
外科医として多くの手術を行い、現在は愛知県でクリニックを開業している小林正学先生(48)。実はがんサバイバーであり、“がんになったがん治療医”としてさまざまな情報発信を行ってきた。がんを宣告された医師は、いったい何を思い、どんな行動を選択したのか。 【写真】「こんなに違うの?」がんの種類によって違う“生存率” 自分で見つけた甲状腺のがん「2019年3月に系列のクリニックが閉院し、行き場を失った超音波診断装置を名古屋にある私の前職のクリニックが引き取ることになりました。 到着後、きちんと動くか動作確認のため自分の首に検査器を当てると、白く石灰化した病変が見え、外科医のころに見慣れた甲状腺がんだとすぐにわかりました」(小林先生、以下同) さらに検査器を当てると、周囲にはたくさんのリンパ節への転移があり、肺の間の縦隔にまで達していることもわかった。短期間にできたがんではないようだった。 「まさか
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