✑ 蓮實 重彦 蓮實重彥さんの連載時評「些事にこだわり」第13回を「ちくま」5月号より転載します。なぜH3ロケットの打ち上げは失敗したのか。明治期以来の日本特有の事情としてある「技術(=工学)」と「見切り発車」について。 ことさら誇らしげに語るべき話題でもなかろうとは思うが、さる三月七日に予定されていた宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工とが共同開発した新ロケット「H3」の打ち上げは、絶対に成功しまいと確信していた。遅れに遅れていた発射がいまさらうまく行くはずもなかろうと、素人目にも思えたからである。もっとも、ロケット「H3」がまったく飛ばなかったわけではない。いったん空中に飛び立ちはしたものの第二段エンジンに着火せず、打ち上げから数分後——より正確には835秒後といわれている——に指令破壊信号が発せられてフィリピン沖の海上に落下し、藻屑と化したという。それが深海の生態系にしかるべき

