歴史が塗り替えられた瞬間、内村航平(リンガーハット)は満面に笑みを浮かべ、新チャンピオンを心からの握手で祝福した。 連覇は10で途切れた。自身より10歳若い19歳の谷川翔(順大)が王座に就いた。それは奇しくも内村が初めて頂点に立ったときと同じ年齢だった。 「おめでとうという感情しかないですね。すごく晴れやかですよ。ようやく解放されました」 言葉通りのすがすがしさでそう言った。 4月27日から29日まで東京体育館で行なわれた体操の全日本個人総合選手権で、内村は初優勝した谷川翔、2位の白井健三(日体大)に続く3位になった。'08年のインカレで植松鉱治(当時仙台大)に敗れたのを最後に10年間続いていた国内の連勝も27で止まった。しかし、表情にも口調にも悔しさはかけらもなかった。 10連覇時には「負けた方が……」。 思えば前人未踏の10連覇を達成した昨年は「もう、地獄ですよね」と疲れ切った顔で苦笑