「65歳になって自分の人生を歩みたいと思った。会社と縁を切りたい」 壇上で議長役を務める社長が、大勢の株主を前に、あろうことか“縁切り”を宣言した。前代未聞の出来事に違いない。 6月23日午前、横浜市で行われた富士通の株主総会。発言者は黒川博昭社長(65)。就任から丸5年。この日をもって会長にも就かず、相談役に退く。黒川社長は業績を悪化させて会社を追われる経営者ではない。反対に、平成20年3月期決算で富士通を営業利益2000億円超を稼ぐまでに復活させた立役者だ。 株主は驚いた。だが、「経営を投げ出すのか」「無責任だ」といった非難は起きず、代わりに退任を惜しむかのように静かな拍手が巻き起こった。日本のIT業界を代表する企業、富士通の改革。株主は、燃焼し尽くした黒川社長の5年の苦労を知るだけに、異例の“縁切り”発言を素直に受け入れたのだろう。 なぜ、黒川社長は会社と縁を切りたいなどといわねばな