自分の肉親について説得力のある文章を書くというのは決して簡単なことではない。結局のところ、文章の力によってどこまでその人物を相対化できるか、そしてその相対化された像のなかにどれだけどこまで自分の感情を編み込めるか、という微妙な勝負になる 村上春樹はレイモンド・カーヴァー『ファイアズ(炎)』の訳者あとがきで、カーヴァーによるエッセイ「父の肖像」について、こう書いている。そして今回、自らの父親を題材にした、『猫を棄てる 父親について語るとき』というエッセイを発表した。 ファイアズ(炎) (村上春樹翻訳ライブラリー) 作者:レイモンド カーヴァー 発売日: 2007/05/01 メディア: 新書 カーヴァーの「父の肖像」は、上記の引用に続けて、「見事なばかりの説得力を持っている」と村上春樹が書いているように、父親がどういう人物であったのか、そして私はそんな父親をどう見つめていたのがよくわかるエッ