過去記事 | 09:28 | その日の朝、目が覚めたときにじりりと鳴ったはずの目覚まし時計はすっかり静けさを取り戻していたようだった。はたまたそれは鳴らなかったのかもしれない、そう思ったがそのようなことはあるはずなかろうなどと寝惚けたまま思いを巡らせ、便所で小便を垂れてから私はふたたび床についた。二度寝である。ふたたび目覚めたとき、目覚まし時計は先刻と同じように押し黙ったままの無表情だった。その不細工な体躯の短針は数字の"8"をすこしばかり過ぎたところを指し、ほっそりとスマートな長針は数字の"4"のあたりを指していた。八時二十分過ぎということになる。わたしは"がばっ"と掛け布団を跳ね除けると上身を起こして鈍い光の充満する方形の窓の外を見遣った。小さな雨つぶがぽつりぽつりと、静かに降り落ちているところだった。雨か、と私は思った。 起きて立ち上がると寒気がした。雨降りだったので私はその所為で