「藪の中」(やぶのなか)は、芥川龍之介の短編小説。初出は「新潮」1月号(1922年)、初刊は「将軍」(1922年)。今昔物語集を下敷きにしたいわゆる「王朝物」の一編であり、芥川の作品中でも屈指の数の論文が書かれている。 1人の侍の死をめぐって、捕らえられた強盗、死骸の発見者の木樵り、強盗を捕らえた放免の話が語られる。また侍の妻は清水寺で懺悔をし、侍の死霊は巫女の口を借りて当時の有様を語る。しかしいずれも自分を中心に語り、話は核心部分で微妙に食い違う。真実は不明、すべては藪の中である。 平安時代のある藪の中を舞台に、殺人と強姦という事件をめぐって4人の目撃者と3人の当事者が告白する証言の束として書かれている。それぞれが矛盾し錯綜しているために真相をとらえることが著しく困難になるよう構造化されており、未だ「真相」は見出されていない。その未完結性の鮮烈な印象から、証言の食い違いなどから真相が不分