人の住む地域へのクマの進撃が加速している。最前線である東北地方では、目撃は珍しくなくなり、人身被害が過去最悪のペースで生じている。人口減少や過疎化で荒廃した里山は、もはや人だけのものではない。このまま放置すれば、2050年には都市も占拠され、日本列島は「クマの惑星」となる。僕は秋田市内の里山で暮らすツキノワグマだ。人間は僕のことを「アーバンベア」と呼んでいる。昨年は好物のブナなどのドングリが大凶作だった。エサを探して山を下りると、人が住む地域まで来てしまった。それ以来、山に帰らず、里山に住み着いている。人の気配は少なく、危険もあまり感じない。