虫が好かない、虫の居所が悪い。昔の日本人は、いわくいいがたい心境を、心の中にすむ「虫」に託して表現した。ここでの虫は昆虫ではなく小さな生き物といった意味で使われている▲現代人には虫嫌いが多い。その名を口にするだけでもむしずが走るとばかりに頭文字で「G」と呼ばれる気の毒な虫もいる。なぜそこまで嫌われるのか。千葉大准教授の深野祐也さんらが進化心理学に基づく検証を試みている▲もとより人間は、感染症など害を及ぼす存在を本能的に遠ざける。1万3000人が対象の調査から浮かんだもう一つの要因は「都市化」。自然に触れる機会が減って知識が乏しいことに加え、室内など、本来いるはずのない環境で対面することで嫌悪感が増す▲「世界で都市化が進めば虫嫌いが増え、生物多様性の保全が進まない原因になる」と深野さんは指摘している。きょうは国連が定めた「国際生物多様性の日」。子どもの頃から自然の中で過ごす機会を持ち、多様性