「土着の科学」の危険性 ──科学を「脱植民地化」し、「西洋的」とされる科学と同様に、土着の伝統的知恵を推奨しようとする考えも、あなたは批判していますね。 先住の人々が科学に貢献したという話を、私は聞いたことがありません。西洋の薬局に並んでいる薬の少なくとも三分の一は植物由来で、その一部は原住民によって発見されたものです。キニーネはアンデス原産の低木由来、アスピリンはヤナギが用いられています。 これらの経験的な発見は、科学と協働可能でしょう。しかし、科学と伝統的知恵の間には大きな違いがあります。科学は方法論、ある事柄が正しいか否か知るための方法に基づいています。伝統的な知恵のほうは、仮説、証明、公表などに基づいてはいません。 そもそも、「西洋的な科学」などというものはありません。科学は300年前のヨーロッパから、現代のようなかたちへと発展してきたように見えます。しかし、こんにちの科学は世界中