「伊勢物語・第六段「芥川」 Isemonogatari (4分45秒) よみ：日高徹郎 昔、男ありけり。女のえ得（う）まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来（き）けり。芥川（あくたがは）といふ河を率（ゐ）ていきければ、草の上に置きたりける露（つゆ）を、「かれは何ぞ」となむ男に問ひける。 ゆくさき多く、夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥におし入れて、男、弓・胡（やな）ぐひを負ひて戸口に居（を）り。はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや」といひけれど、神鳴るさわぎに、え聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見ればゐて来（こ）し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。　 「白玉かなにぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを」

毎月第1・第3火曜日更新 2007.11.20 ききみみ名作文庫 森鴎外「高瀬舟」 朗読：金田賢一 2007.11.06 ききみみ名作文庫 梶井基次郎「路上」 朗読：横内正 2007.10.16 ききみみ名作文庫 芥川龍之介「秋」 朗読：小川真由美 ききみみ名作文庫とは 不朽の名作文学を日本を代表する俳優･女優が朗読でお送りいたします。この朗読コンテンツは、移動中でも文学を「聴ける」コンテンツです。教科書に載っていた！名前は聞いたことがある！学校で朗読を聴いた！けれども、どんな作品だったかな・・・。名作文学をセレクトし、朗読にてお届けいたします。通勤で、ご自宅で、気軽に文学を楽しめる朗読コンテンツ。文学が苦手な方も朗読から文学に触れてみてください。文学好きな方も一流の朗読で作品の新たな発見をしてください！ ※　本朗読作品は原作が古典文学であり、著者が差別助長の意図で表現をしているもので