「年をとると脳細胞は減るばかり」という通説は誤りだ。生き方次第で脳細胞は増やせる。最先端脳科学の新常識を探った。 人の名前が思い出せない、約束を忘れる――こんなことがあると「年のせいで脳細胞が減ったに違いない」とがっくりしがちだ。だが、これは間違った認識である。 じつは、脳についてはいくつかの誤った俗説がまかり通っている。その一つが、「脳細胞は1日10万個死ぬ」という説だ。誰の説か不明で、数字にも根拠はない。アルツハイマー病やパーキンソン病患者は別として、加齢で失われる脳細胞の数は、全体の個数からすると、わずかな量にすぎない。 「おとなになったら脳は衰える一方」という説もウソ。脳は常に回路を組み直しており、日々変化していく。使い方次第では、おとなになってからも回路を充実させ、成長させることは可能だ。 では、年をとると物忘れが増えるのはなぜなのか。 久恒辰博・東京大学大学院准教授は「原因は脳