ある女が、気球飛行中に風で地図を飛ばされてしまった。 目視では進むべき方向がわからなかったため、仕方なく、眼下を歩いていた男に呼びかけた。 「すみません、ここがどこだか教えていただけませんか。 一時間前には戻っている約束をしているのですが、迷ってしまって・・・」 男は、こう答えた。 「あなたがいる場所は、ざっと見て地上三十メートルほどの上空です。 位置としては、北緯三十六度三十分と三十五分の間、東経百三十九度四十五分と五十分の間というところでしょう」 これを聞いて、女は尋ねた。 「失礼ですが、ご職業はエンジニアでいらっしゃいませんか?」 「そうです。なぜわかったのですか?」 「今いただいた情報はきっと理論的には正しいのでしょうけれど、数字は解釈の仕方がわからないと役に立ちません。 現に私は相変わらず迷っていて、問題は何も解決されていないからです」 すると、男はこう言った。 「あなたは、プロ