全世界で約200万本のヒットを打ち出した、スクウェア・エニックスより発売中のゲームソフト「NieR:Automata」。本コラムでは、この作品が一体何を成し遂げたかということについて、私なりのひとつの考えを提示したいと思う。 はじめに、私が本作をクリアしたときに思い起こした、ある苦い記憶の話をしよう。もちろん、読み飛ばしてもらっても構わない。 或ル日ノ記憶: 序 頭がおかしくなってしまった。 聡明な母に対してそう感じたことが一度だけ、ある。私が中学を卒業する年の1月、高校受験を直前に控えて塾から家に帰宅すると、そこには新しい家族が待っていた。 空(そら)とすでに呼ばれていたそれは、黒い毛並みに茶色の眉が愛らしいダックスフンドだった。父が獣医であったため、飼いきれなくなった患畜の子供を育てることになったらしい。 時期もあり、最初は少し厄介くらいに思っていたが、彼が母や私の日々の生活の垢を落と