数年前から韓国文学を好んで読むようになった。 きっかけは今となってはよく思い出せないが、その当時の私が抱えていた傷を柔らかく包んでくれるようで心地が良かった。優しいだけではなく、苦みも苦しみも同時に引き受けながら、時間をかけて癒してくれる力が韓国文学には感じられた。何冊も読むうちに好みの作家が現れた。それがキム・ エランだった。 今年日本で刊行されたキム・エラン『ひこうき雲』を読んだ。 キム・エランの『外は夏』に感銘を受けた私の『ひこうき雲』 に対する期待は、634mmを誇る東京スカイツリーよりも高くなっていたはずなのだが、そんなものはあっさりと飛び越えるくらい素晴らしい本だった。 『ひこうき雲』には8篇の物語が収録されている。 最初の物語『そっちの夏はどう?』は、やや太目な体形のミヨンが憧れの先輩からバイト話をもちかけられたが、同日に幼馴染の葬儀があり迷ったミヨンはバイトへ向かう話だ 。
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