世間の目から逃げ続けるろくでなし男、バンクシーの話題は久しぶりだ。最後にニュースになったのは、2009年にホームタウンのブリストルの美術館で個展をやるという、突拍子もないものだった。最初にその話を聞いたとき、ついにストリート出身のアーティストは違法な器物破損行為から卒業し、美術機関とオークションハウスのお世話になるべくギャラリー・アーティストに変貌を遂げたのかもしれない、と思った。だがその予測は外れた。その後、常にスリルを追い求める変幻自在なこの男は、ゲリラ的映画監督として“ドキュメンタリー風”映画、『Exit Through the Gift Shop』を作り始めたのだ。 作品に登場するのは、実在する熱狂的グラフィティファンのフランス人、ティエリー・グエッタ。ストリートアートたちのコミュニティ内部へのアクセスを得た彼は、カメラを片手に真夜中のグラフィティ行動に同伴する。もちろん登場するグ