研究室に、ここ数ヶ月で急にやる気を出した体育会系の人がいる。彼はあまり仕事 (研究) のできない学生であったが、宴会幹事が得意なタイプとしてある程度の人望を持っていた。彼は留年しており他の同学年の人たちは先輩のように敬語で接していた。やる気になる前の彼は一見マジメであり、彼の先輩たちからは良き後輩として認識されていた。 それは新卒の就活の開始に合わせてはじまった。やる気を出した彼は同じく就活をしている同学年のたちを「指導」しはじめた。最初の餌食になったのは彼の隣の席の学生であった。集中して作業しているマジメな学生に声をかけて、作業を中断させて就活の「情報共有」をしていた。彼の大きい声を以ってして「情報共有」は毎日行われ、研究室で飛び交う話題のほとんどが就活の話になった。次の餌食も同じく同学年の学生であった。彼はその学生を自分の居室 (研究室には複数の大部屋がある) に呼び出して「指導」をは