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ブックマーク / daen.hatenablog.jp (6)

  • 社会を擬人化するな――ロバート・ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」 - 誰が得するんだよこの書評

    「もし国家が存在しなかったなら、国家を発明する必要があっただろうか。国家は必要か。国家は発明されねばならないか」。 この、過激な問いかけから書はスタートする。 まず国家の役割として治安の維持・防衛があげられる。しかし、こういったサービスの提供は国家の独占事業ではなく、民間軍事会社やセコムだって、似たようなサービスを提供できる。よって無政府状態にあってはいきなり国家のような仕組みができるのではなく、まずは人々を守るサービスが自発的に始まるだろう。ノージックはそのような契約ベースの仕組みを保護協会と名付け、無政府状態では複数の保護協会が乱立するはずだと考えた。 そして、その保護協会は会員数が多ければ多いほど紛争解決機関としての競争力が高まるから、ひとたび優位にたつ保護協会が出てくると、それは競合他社を圧倒し、支配的な保護協会にまで成長する。 とはいえ、この保護協会は会員に対する外部からの侵害

    社会を擬人化するな――ロバート・ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」 - 誰が得するんだよこの書評
  • 「なぜ人を殺してはいけないの?」に、ニーチェがマジレスしたら - 誰が得するんだよこの書評

    どうなるんだろう。 というわけで、ニーチェ「善悪の彼岸・道徳の系譜」の解説です。ニーチェは哲学や政治学をやるのなら必読だと思うのですが、いかんせん文学的な表現が多すぎて何を言っているのかよくわかないと投げ出す人もいるんじゃないですかね。というわけでニーチェの思想で一番使える「相対主義」にしぼって説明します。 通常の哲学とニーチェの哲学の違い 哲学は形而上学とも呼ばれています。メタフィジカルな学問だというのです。つまり物理的・現実的(フィジカル)なことにたいしてどのように人間が取り組むかという、現実(フィジカル)より上位(メタ)の構造・ルールについて研究するのです。たとえば、人間の肉体がどのような仕組みで動いているかというのはフィジカルな話ですが、人間はどのように生きているのか・どう生きるべきなのかというのは、メタフィジカルな話です。 さて、ニーチェがやっているのは通常のメタフィジカルな話で

    「なぜ人を殺してはいけないの?」に、ニーチェがマジレスしたら - 誰が得するんだよこの書評
  • 不道徳な経済学 / ウォルター・ブロック - 誰が得するんだよこの書評

    人生を左右する一冊というものがある。 僕にとって高校生のときに読んだこのが、経済学政治思想にハマるきっかけだった。書では、社会的に不道徳だとされている人間こそが、ヒーローだと主張する。なぜなら、彼ら彼女らこそが不道徳という汚名を引き受けてまで、もっとも重要な価値―――個人の自由―――を守る防波堤だからだ。たとえば、麻薬の売人は書によればヒーローである。麻薬を使ってラリようが、アルコールを飲んで酩酊しようが、どちらも人の意思で行われている以上、両者を区別する必要はないはずだ。 にもかかわらず、立法者は麻薬の使用は禁止し、アルコールの使用は合法化している。それによって酒屋の主人は道徳的に非難されることはないが、麻薬の売人はクズ扱いされる。だからこそ、著者は麻薬の売人こそを道徳的に擁護するのである。 もし彼らが身体を張って麻薬を供給しなかったら、一体誰がシャブ中の幸福追求権を実質的に担

    不道徳な経済学 / ウォルター・ブロック - 誰が得するんだよこの書評
  • レイ・カーツワイルの未来予測が凄まじい件 - 誰が得するんだよこの書評

    レイ・カーツワイル「ポストヒューマン誕生」というから「これはすごい」と思った箇所を抜粋します。社会の変革に貢献したのはなによりも一般人の生産性の向上だったとドラッカーは語りましたが、カーツワイルの予想通りに技術が発展するとすれば、21世紀は爆発的な生産性の向上を通して社会が後戻りできないほどに変容する時代ということになるでしょう。 ナノテクと脳科学とAI 革命はすでに始まっています。コンピュータの高性能化・低コスト化により、今までは難しかったことが簡単にできるようになります。たとえば、人間の脳内の活動をそっくりそのままコンピュータでシミュレートすることも可能になります。 モラヴェックの分析によれば、網膜は、輪郭と動きの検出を毎秒1000万回も行う。ロボットの視覚系の開発に何十年も費やしてきた経験から、モラヴェックは、これらの検出動作の一回分を人間のレベルで再現するには、約100回のコンピ

    レイ・カーツワイルの未来予測が凄まじい件 - 誰が得するんだよこの書評
    suna_zu
    suna_zu 2022/08/04
  • 象られた力 / 飛浩隆 - 誰が得するんだよこの書評

    国産SFの最高峰でしょう。2004年度「SFが読みたい!」国内篇第1位の、飛浩隆の短編集。テッド・チャンと並び賞されうる才能です。型破りなアイディアとそれをストレートに伝える清新な文章。作品のテーマは様々なんですが、強引に一くくりにするなら美術SFであり芸術SFと言えます。人が何かを美しいと感じる時、その「美」はどこから生まれてくるのか。美術評論家だけが気にするような話題ですが、これをSFという視点で捌いたとき、誰もが目を瞠るような美しさがたち現れます。一見、ただキレイなだけの文章を並べているかに見えます。しかし美を解き明かすというテーマを考えるとそれは間違いです。全てがその中身と表面において美しさを象っており、それゆえにこそ清冽な感動がありました。以下かるくネタバレ。 デュオ 倒叙ミステリかつ音楽SF。双子の天才ピアニストを殺したその驚くべき方法と理由。この短編集の中で一番好きな作品です

    象られた力 / 飛浩隆 - 誰が得するんだよこの書評
    suna_zu
    suna_zu 2022/08/04
  • 哲学者・山脇直司氏への公開書簡――誰が公共哲学をファイナンスするのか - 誰が得するんだよこの書評

    先日「公共哲学とは何か」を批判的に取り上げたところ、著者である山脇氏から「私自身はこのが貴方の言うように「無害ないいとこどりの」とは全く思っておりません(中略)現代社会のあり方について激しく論争しましょう。」とのコメントをいただきました。 僕も市民の端くれとして、このお誘いには誠実に対応しなくてはならないでしょう。というわけで山脇氏の講義で教科書にも指定されている「グローカル公共哲学」の書評とともに、僕の意見を述べたいと思います。 結論から言えば、それは「この公共哲学は理想主義ではあっても、理想的現実主義ではないのではないか」ということです。 ここでは「正義」の話はやめよう まずはじめに断っておきますが、僕は公共哲学が目指している価値について、その是非を判断しません。つまり何が正義だとか、何が倫理的だとか、語るつもりはないということです。それはこの記事の主題ではありません。 (むしろ個

    哲学者・山脇直司氏への公開書簡――誰が公共哲学をファイナンスするのか - 誰が得するんだよこの書評
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