通称、かんなみ新地。 兵庫県尼崎市の阪神電鉄出屋敷駅から北へ歩いて10分足らず。2、3階建ての木造建築が並ぶ一角は先月まで、夕暮れになると異世界のように妖しい空気を放っていた。 30店ほどの扉が次々に開き、ピンク色のネオンが暗い路地ににじみだす。香水の甘い匂いが漂ってくる。光の中の若い女性にほほえみかけられ、中高年の女性に手招きされながら男性客が吸い込まれていった。 店を切り盛りする「ママさん」、店先で客を呼び込む「引き子さん」、そして店の中で客と対面する「女の子」…。 そう呼び分けされる彼女たちのなりわいは、飲食店で従業員と客が恋に落ちて体を重ねる-という建前の下、終戦直後から約70年もの間、社会で「暗黙の了解」とされてきた。 その「色街」に今月1日、1枚の文書が突き付けられた。ついこの間まであった光景が突然、尼崎から消えたのはなぜか。 ◆ 1日昼ごろ、阪神尼崎駅前にある中央地域振興セン
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