■ゲーテが三大詩人から落ちた訳 三国同盟を結んだ枢軸国の人道に対する罪の問題と、独日伊の文学史的地位の敗戦後の変動について、私見を述べたい。 私は学校時代を敗戦前後に過ごしたが、当時は第一外国語は英語で、高校から習う第二外国語はドイツ語だった。ドイツ語の威信は明治以来、旧制高等学校や帝国大学で非常に高く、ドイツ語は教養のため、英語は商業のためと思われていた。ドイツにはゲーテ、カント、ベートーベン、マルクスなどがいたからでもあったろう。 ≪贖罪でドイツ文化に自信失う≫ 昭和23年、旧制高校に入ったときは、私も当然、ドイツ語を選んだ。それでも、大学に進学してからはフランス語を中心に学んだので、昭和20年代の末、フランス政府の奨学金で留学することを得た。戦勝国アメリカへ渡った当時の日本人が肩身の狭い思いをしたのに比べて、日本と同じく敗戦国だったドイツやイタリアや、形式的には戦勝国だが実質的には敗