「部品が組めねえよ!」 この物語の主人公である鈴木孝は,総合電気メーカー「霜月電機」の入社3年目のエンジニアである。彼は現在新機種のデジタルカメラの躯体設計を担当している。今回の設計は,鈴木が大部分の設計を担当した始めての商品開発であった。 霜月電機の新人は入社後,先輩エンジニアの手伝いから始め,半年経ったころからやや軽めの新商品開発を主担当し,商品開発全般の流れを理解するのが決まりだった。とはいえ,鈴木一人がすべての設計をしているわけではない。多くの部品メーカーのエンジニアや設計派遣者と手分けしての作業であり,実際には鈴木が図面を出図することはあまりないのが現状である。 何日間かの徹夜が続いたが,デジタルカメラ新機種の出図も終わり,実際の量産化を想定してラインでの作業性などを検証するイベント,量産試作が始まる日になった。量産試作に鈴木のような『商品担当』が立ち会うことはあまりない。鈴木も