大阪・堺の大衆食堂に「飯炊き仙人」と呼ばれる店主がいる。村嶋孟(つとむ)さん、83歳。炊きたての白米にこだわり、半世紀。銀シャリの達人は5月で引退する。 路面電車が走る阪堺線の寺地町駅から歩いて3分。堺市堺区の住宅街に「銀シャリ屋ゲコ亭」はある。 戸を開けて右手に26席、左手にオープンキッチン。奥にあるレンガ造りのかまどの前が仕事場だ。 毎朝、午前5時から米を研ぎ始める。さっぱりした味わいでおかずに合う仙台産のササニシキ。7時半から飯炊きに取りかかる。 火加減は弱火で6分。強火で5~7分、少し弱めてまた5~6分。沸騰してきたらフタを回し、噴きこぼれないよう目配りする。最後に強火で水気を飛ばす。 「1に水、2に水、3に水」が飯炊きのコツ。素焼きのかめに水をためて炭を沈ませ、一晩寝かせることで味が柔らかくなる。米を水に浸す時間や炊く時の水加減も味を決める。