ブックマーク / mhotta.hatenablog.com (5)

  • エントロピック重力理論 - Quantum Universe

    最近、オランダのエリック・フェアリンデさんが提案したエントロピック重力理論が世間で注目を集めている。これはオランダの観測グループが銀河による弱い重力レンズの効果を使って彼の理論の検証を行い、データと整合したという論文を出したからだ。 フェアリンデさんは、長距離では重力の強さが変化して、みかけ上暗黒物質(ダークマター)があるように振る舞うという主張をしていたため、観測と矛盾しないという観測結果からダークマターは実は不要だったとか、エントロピック重力理論は正しかったとかと、断定的に受け止めた方も多いようだ。 しかしこの彼の"理論"は、完成した理論ではない。根拠の確立していない多数の仮説を沢山組み合わせて、観測と比べられる量を同定しているだけで、精密な定式化がなされているわけではないのだ。論理的にダークマターが存在しないことを示したものでもない。 論文では、量子もつれやエンタングルメントエントロ

    エントロピック重力理論 - Quantum Universe
    symbioticworm
    symbioticworm 2016/12/25
    おお堀田さんの解説! エントロピック重力の名前だけは耳にしても、その内容までは漠然とどういうものかすらわからなかったので、こういう専門家の手による時宜を得たエントリが読めるのは大変ありがたい。
  • トンネル領域で粒子を見つけたら、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? - Quantum Universe

    ツイッター(@hottaqu)で、次の問題を出してみた。 例えば1次元空間で図1のようなポテンシャルの中の粒子を考えよう。 基底状態のエネルギーEは、原点付近のポテンシャルVoより小さい。 しかし、エネルギーが足らないため古典的には粒子の侵入を許さない領域にも、基底状態の波動関数は浸み込んでいる。 「トンネル効果」である。 従って粒子が原点周辺に見つかる確率は、零ではない。 しかし原点付近に粒子が見つかるとすると、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? それが「問題」である。 測定の結果、例えば図2のように粒子がある点x=ξの周辺に局在した波動関数u(x-ξ)になる。 この状態では明らかにポテンシャルエネルギーの期待値は基底状態のエネルギーより高い。 また粒子がより局在するため、運動エネルギーの期待値も基底状態の時より高くなる。 従って確かに粒子はエネルギーの高い状態に見つかったこ

    トンネル領域で粒子を見つけたら、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? - Quantum Universe
    symbioticworm
    symbioticworm 2016/01/15
    測定に用いる粒子のエネルギー自体が測定対象の位置を乱すというハイゼンベルク流の初期の不確定性解釈の復活みたいで面白い。
  • デコヒーレンスは多世界解釈の観測問題を解決しているわけではない。 - Quantum Universe

    デイビッド・ドイッチュがあちこちで「量子コンピュータが圧倒的に速いことは多世界解釈が正しい証拠」と宣伝しており、またそれを扇動的に扱う科学記事も人気を集めているため、世間では多世界解釈は完成された量子論解釈と誤解している人がこの10年くらいで増えてしまったように思う。 多世界解釈では宇宙全体を記述するただ1つの波動関数が実在しており、図1のように時間とともに様々な宇宙の量子的線形重ね合わせに進化する。 ここに出てくる各宇宙に異なる計算作業を分担させて巨大な並列計算を量子コンピュータは行うために古典コンピュータに比べて指数関数的に速いのだとドイッチュは説明するのだ。 また他にも、コペンハーゲン解釈で出てくる波動関数の収縮はシュレーディンガー方程式では記述できない"謎"の過程であり、それはコペンハーゲン解釈を超えて説明されるべきだという主張を繰り返す人もいる。 多世界解釈では宇宙全体を記述する

    デコヒーレンスは多世界解釈の観測問題を解決しているわけではない。 - Quantum Universe
  • 量子エンタングルメントと時間の矢 - Quantum Universe

    セス・ロイドさんは、量子メカニックを名乗る、猛烈に頭の回転が速いMITの教授である。 量子情報分野では多くの良いお仕事をされており、また「宇宙をプログラムする宇宙」(早川書房)等のポピュラーサイエンスのの著者としても有名である。 1988年の彼の博士論文での研究[1]が記事[2]に取り上げられていた。 今回このセスさんが考えていた周辺のことに触れてみたい。 量子エンタングルメントと時間の矢の問題である。 但し理解のための準備も必要なため、少し違う情報理論の入口から入っていこう。 まずアリスが1ビットの古典情報が書き込まれている電子スピンを持っているとしよう。 例えばz軸方向のダウン状態を0に、そしてアップ状態を1に対応させればこれは実現できる。 アリスはできるだけ安全にこの情報を秘匿しておきたいと願っているとしよう。 古典情報は簡単にコピーできるのが特徴であり、来は最大の利点でもある。

    量子エンタングルメントと時間の矢 - Quantum Universe
  • 量子テレポーテーションは、本当はテレポーテーションではないのか。 - Quantum Universe

    量子テレポーテーション。 最近よく聞くバズワードかと思う。 物理学の世界においてこのテレポーテーションは実験もなされ、応用が試みられる段階だ。 しかし一般の方々の中には、当に人類が瞬間移動の術を手に入れたと勘違いされている人もいらっしゃるようだ。 それに対して物理の専門家は、量子テレポーテーションでSF的な瞬間移動装置を作るのはできないことも説明してきた。 この事実を強調することはとても意義があることだと思う。 このプロトコルではある古典的な情報を相手に伝える必要があるため、情報通信の最大速度である光速を超えてテレポーテーションを起こすことはできないのだ。 そのため物理学でいう「因果律」も破ることはない。 ただ認識論的な量子論解釈である現代的なコペンハーゲン解釈では、テレポーテーションの送り手側にとっては確かに瞬間移動のように見える現象ではある。 ただし受け手にとっては瞬間移動ではなく、

    量子テレポーテーションは、本当はテレポーテーションではないのか。 - Quantum Universe
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