水俣病関西訴訟は国・熊本県の上告によりさらに長期化することになったが、 これまで自ら2度法廷に立ち、証言を行ってきた気鋭の疫学研究者・ 津田敏秀さんが5月8日に訴訟団が川口順子環境大臣らに「上告するな」の交渉を行った際に読み上げた意見書を《さうすウェーブ》に寄稿してくれた。津田さんの発言は常に先鋭的で、その研究結果も学会などで注目されているが、今回の意見書はトーンを抑えた冷静な表現ながら、指摘するところは今後の最高裁での論争の中でも注目される論点といえる。全文を紹介する。 <はじめに> 私は、一介の研究者に過ぎませんので、「上告しろ」とか「上告するな」とか申し上げる立場にはございません。ただ、大阪高等裁判所で証言をさせていただいた一人として、また水俣病に関して学問的責任のある学会である日本精神神経学会の学会員として、今回の大阪高等裁判所判決で疫学上問題となった点と、国際的な公害事件・集団食