インターネットはいろんなものを恐ろしいほど身近にした。 私は詐病ではないとしか思えない妄想にとらわれている人間をこれまで30年弱の人生で2回ほど見たことがある。ひとりは痴呆が進みつつあった祖父であり、もうひとりは高校時代の元同級生だ。祖父はあるとき突然強烈な被害妄想と見当識の異常を示し、老人性のせん妄と診断された。一過性のものであったらしく薬を飲んだり飲まなかったりしているうちになんとなく改善した。元同級生の場合はどちらかといえば思い込みが激しいだけだったかもしれない。だが、卒業後しばらくたってから唐突に私を訪ねてきた彼はあきらかに私の見えないものを見ていた。そして私に心酔していた。私が死ねといえばおそらく彼は死んでいたと思う。私は彼を恐れずにいることができなかった。 祖父はすでに亡くなった。元同級生は現在関東で生活しており、海外で暮らしている私に数年に一度、難解なメールをよこす。 祖父は