この本の発行日は2011年3月10日。その3カ月後の6月11日、小熊英二氏は脱原発デモに参加している。《日中、7千人が参加し全国最大規模になった新宿のサウンドデモでは、「社会学者の小熊(おぐま)英二さんです」と紹介されてあいさつした小熊さんが「楽しくやりましょう!」と呼びかけた。》(「6・11デモ 新旧混在 労組の旗と若者の音楽」朝日新聞、6/20) 「3・11以後」という言い方があるが、私はむしろ今問われているのは、3・11以前の平常時にどれだけのことを考え、どんな風に自らの言動に対する「社会的試練」(小林秀雄)を経験してきたかということだと思う。*1 小熊英二氏は、「あとがき」(二〇一一年一月)で、こんなことを書いている。 またドイツなどでは、七〇年代からの経済の低迷や失業率の増大があっただけでなく、八〇年代には中距離核ミサイル配備による欧州核戦争の危機、チェルノブイリ原発事故といった