僕がある時彼のアパートを訪ねると、彼はベッドの前でうずくまり、 「自意識に裏切られた」と泣いていた。 僕は結露し始めた酒の缶を取り出し、彼に勧めた。 彼はビールを選んだ。 「僕は、あんまり、人に好かれる性格じゃ、ないんだ。 自分でも、自分に、いらいらする時、あるし」 僕は、本来彼の飲むはずだったカルピスサワーを口に含んだ。 「でも、いつも、僕の自意識だけは、僕の味方だったんだ。 僕を嫌う人がいたら、『本当は君と仲良くしたいんだよ』とか、 『君の才能に嫉妬してるんだよ』とか、子供だましみたいだけど、 優しく、慰めてくれた」 「なのに、最近、僕のすることを肯定してくれなくなった。 僕が話を振っても、言葉を濁すことが多くなった。 それで、今日、僕が電車でおばあさんに席を譲らなかった時、 『だから君はだめなんだ』って」 彼はまた目から涙を落とした。 「確かに、ちょっと悪いかなと思ったけど、だって、