駒ケ根市の光前寺に伝わる民話「早太郎」を知っている人は多いだろう。七百年前に駒ケ根の地から静岡県に妖怪を倒しに向かった犬の話で、絵本などで地域の人々に親しまれている。ただ、この早太郎は静岡では「しっぺい太郎」という名前に変わる。なぜ同じ犬を指す名前が違うのか。その理由を探ってみた。 今から七百年ほど前、遠江の国、見付(現静岡県磐田市)の村を一人の旅の僧侶が訪れた。村では毎年、秋祭りの時期に村の娘を神様にささげる儀式が行われていた。実は神様と呼ばれていたのは、見付天神に巣くう大猿。大猿は「早太郎(しっぺい太郎)はおるまいな」と周囲を警戒しながら、娘をさらってい...