2019年12月刊のSF小説2作をレビューする。(文:橋本輝幸) チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』(吉川凪・訳、集英社) マーサ・ウェルズ『マーダーボット・ダイアリー』(上下巻、中原尚哉・訳、創元SF文庫) チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』(吉川凪・訳、集英社) 韓国の作家のSF短編集。巻頭の掌篇「デザート」を読んで、まず面食らうかもしれない。語り手の友人Kは、次々変わる彼氏をデザートの名称で呼んでいる。最初はあだ名かとも思うが、どうやらKの世界理解は彼氏に限らず、甘味や食を中心に形成されているようでーー? 比喩表現と解釈すべきなのか、あるいは不条理小説なのか、認知にまつわるSFか。本作の解釈はもちろん各読者にゆだねられるだろう。試金石的な一篇である。ともあれ、結末で語り手が変容し、Kと同じ視野を共有できるところに希望がある。表題作「となりのヨンヒさん」でも似た感覚が味わえる。主人
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