「マンガ」 水木しげる 時々、下手くそな絵とカラの頭とをもって、マンガ志望者が現れる。 「しばらくお勤めでもしながらゆっくりやったらどうです」というと、奇妙な顔をする。彼らには説明しても、下手くそな絵とタリナイ頭がわからないらしい。 絵は努力しだいでうまくなるし、カラの頭も一生懸命つめればつまるから心配ないが、「はじめから描かせてみてくれないのは、おれの天才を認めていないのだ」という目つきには閉口してしまう。それに、ちょっと誰かに似た絵を描けるようになると「もう俺はカケル」と早合点してしまうから困るのだ。十年位かけてじっくりやろうという心構えなんか見たくても持ち合わせていない。二、三年のうちに名声とお金を手中に収めようという安易な気持ちだから、ボクは彼等をケイベツするのだ、 ショウといわれるプロレスでも激しい訓練の後に得た業だ。何事にも長いトレーニングが必要なのだ。マンガの場合は、スポーツ