「太陽の季節」から57年。 坪内逍遙『小説神髄』に始まりを求めると、 この小説は、日本近現代文学史のちょうど中間あたり、ヘソに位置している。 以来、石原慎太郎は文学の一線に出ずっぱりであり、 芥川賞を見ても、石原以前の受賞者で存命であるのは安岡章太郎一人のみで、 「現役の作家」というしばりを加えると石原が最古ということになる。 つまり、石原慎太郎の歩みは、戦後日本文学全体とほぼ軌を一にしている。 良くも悪くも強烈な存在感を放っていながら、 しかし、石原の文学が正面切って扱われたことはごくわずかしかない。 作品数の膨大さも含めて、なにか対処に困るもの、とでもいわんばかりだ。 戦後日本文学を、まるで暗黒物質のように鬱然と覆う石原慎太郎の文学。 この深い暗黒を再び太陽でともすことはできるのか? ――それがこのイベントの問いであり試みである。 ※ウクレレ教室付き ――栗原裕一郎(