昭和歌謡をあらためて聴いてみると、日常会話では使わない「あんちくしょう」や「エトランゼ」など独特のワードが多かったことに気づいた。リアリズムを追求すると言うよりも、どこか大衆の夢や憧れ、虚構の世界みたいなものを歌っていたのではないだろうか。 対して、平成の歌詞は「うんうん、こういうことあるよね~」みたいな共感路線に徐々にシフトしていった感がある。7月の新刊、『歌詞を愛して、情緒を感じて 昭和歌謡出る単1008』(誠文堂新光社)という書籍を読んでふと、そんなことを考えた。昭和歌謡に頻発する、象徴的なワードをあいうえお順に並べ、受験生時代を思い出す「出る単」仕様にしたもの。平成も終わりに近づいたいまこそ、登場するワードから、我々が知らず知らずのうちに失ってきたものを考えてみたい……そんなわけで、著者のライター・田中稲さんにお話をうかがってみることに。 昭和の絵師と呼ばれ、『同棲時代』などの名作