毎年秋ごろになると、実家からかかる電話の〆の言葉が決まってきます。 「餅つきにはこれるの?」 愛知県にくらす山田家は、毎年12月30日に餅をつきます。 名古屋駅から急行電車で約15分、その駅から徒歩10分。 バリバリの郊外の住宅地なのに、なぜか我が家だけは畑を耕し、井戸の水をくみ、餅をついています。 「正月は帰ってくるの?」とはあまり言われません。 とにかく、餅つき。 餅つきの出欠がどうしてもとりたいようです。 餅つきには、叔父叔母従兄弟やその友人たちが子供も連れてわんさかやってくるので、実家を離れて15年以上もたつ私なんて別にいらないはずなのに。 「餅つきには全員集合」 これが大前提なのです。 12月30日。 早朝、まだこちらが布団に入っているうちから、パチパチと薪が燃える音や、ぺったんぺったんと餅をつく音が聞こえ始めます。 続々とやってくる知っている人や知らない人。 案の定、私はとくに