その日、おばあさんは山が落ちるのを見た。 胃がつっぱるような、妙な感覚に違和感をおぼえおばあさんが顔をあげる。 彼女のはるか頭上、雲間を破ってピンクの物体が顔を出し、ゆっくりと降下をはじめた。にこ毛に覆われた柔肌はいく筋もの雲を引いて、崑崙山の頂上に落着する。瞬間、おばあさんは時空が波打つのを感じた。視野ぎりぎりいっぱいまで広がったピンク色の壁の、そのまた両端の右と左に太陽が見えた気がした。その二つの太陽が重力レンズ効果によるものだということにおばあさんが思い至ったときには、すでに彼女の眼前には桃の壁が迫っていた。 右足がピンクの山と地面に挟まれぐしゃりと音を立てる。が、おばあさんがその音を聞いたかはわからない。聞いたと感じるための脳もすでにつぶされていたからだ。 桃はすべてを飲み込みながらその位置エネルギーを加速度に変換していった。 ふもとにある動物たちの村も桃の柔肌につぶされめり込み消
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