一週間で同じ虫を三回くらい見た。本を読んでいると腕に飛びのってくるのである。そのたびに「うわああああああ」と言って払いのけている。 虫は蜘蛛みたいな形をしていた。それがなおさら嫌悪感を生む。しかし、床にじっとしている姿を見ると、そこまで憎む気にはなれない。 虫は短足なのだ。長靴が似合いそうである。 殺るか? と考えているうちにスススとどこかへ行ってしまう。部屋のなかにいるというのは不気味だが、いなくなってしまうとそこまで気にならない。僕は神様から目の前にないものを全力で見ない才能を授かっていた。片付けなくてはならない問題を未来へ送ることに関してはAmazonより早いのだ。 それにそのうち部屋から出ていくだろうという楽観的な気持ちもあった。これまで両手で数えられるほど多くの友人がやってきたが、リピーターは一割にも満たない。 しかし虫は気にいってくれたらしい。出現するたび腕に飛びのってくるのを
![一週間で同じ虫を三回くらい見た](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b1638cdb5807a4788e4ba3c1109a984166e095fc/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fanond.hatelabo.jp%2Fimages%2Fog-image-1500.gif)