ことしもまた、サンマが揚がった。いや、水揚げできて、本当によかった。このところ不漁だったが、ことしは今のところ、まずまずだ。 ーー7年と8か月前、その恵みをくれる海に襲われた町、大船渡市。被災が激しかった東北3県の自治体の中でも、比較的早く復興が進んでいるとされている。そんな自治体なのに、今月行われた市長選挙では、まさにその「復興」をめぐって激しい衝突が起き、そして大接戦の末、結果が出た。 この町に何が起きたのか、現地から「いま」を伝えたい。(大船渡・陸前高田支局 舟木卓也) 大船渡の形は独特だ。 リアス式海岸が広がる岩手県の沿岸の中でも、特に入り組んだ地形をしていて、漁港には適した土地柄。もちろん、基幹産業は漁業だ。 東日本大震災では500人以上が犠牲になり、沿岸部の市街地も壊滅した。ただ、大船渡がほかの町と大きく違った点は、湾に沿って急な高台があり、そこに住宅街があったことだ。過去の災