はるかな昔、人間は森に住み、森の恵みを糧に暮らしていました。のちに森を離れて文明を築くようになってからも、人間は森という故郷に「楽園」の思い出を重ね、ノスタルジアを抱きつづけてきたのです。古今の芸術作品のなかにも、そうした原初の森への郷愁や憧れがあらわれています。 森の神話・伝説を描く絵画、情感ゆたかな風景画、メルヘン絵本、植物文様をもつアール・ヌーヴォーのガラス器など、森の魅惑を体現する作品の数々が展示されます。アンリ・ルソーの楽園図、クロード・ロランにはじまる各時代の風景画、セリュジエやゴーギャンの描く伝説の森、グリムやアンデルセンの挿絵、シュルレアリスムの森の幻想と神秘・・・本展は、そうした森にかかわる多くの作品を通して、私たちのうちにひそむ「森の記憶」をさぐり、芸術・文化から自然界へと視野をひろげていきます。 東京都庭園美術館は都心の森にかこまれた、世界にも稀有なアール・デコ様